農工大薬理学研究室

農工大薬理学研究室

  

Research thema研究テーマ

当研究室では基礎研究から臨床での治療に寄与するものまで、多岐に亘る研究を行っています。

  1. がん三次元培養に関する研究
  2. 猫の乳がんの抗がん剤感受性検査の研究
  3. 犬の前立腺がん・膀胱がんの抗がん剤感受性検査の研究
  4. 薬物動態に関する研究
  5. がん超音波療法に関する研究

上記の文字をクリックすると各テーマの概要にジャンプできますので、興味がありましたら覗いてみて下さいね♪

がん三次元培養に関する研究

近年、上皮組織の三次元構造を培養組織で再現する方法(オルガノイド培養法)が開発されました。
当研究室ではヒトや犬などの様々な組織からオルガノイドを作製し、病態解析を行うことで新たながんのメカニズム解明診断マーカーの開発を目指しています。

近年、三次元の上皮組織構造を培養ディッシュ上で再現する方法としてマトリゲル三次元培養法(オルガノイド培養法)が開発されました。
オルガノイド培養法によって、様々な組織の上皮細胞を三次元的に長期培養出来ることが示され、がん研究への応用が始まりました。

当研究室では、前立腺がん罹患犬の尿サンプルを用いて前立腺がんオルガノイドを作製する方法を見出しました(Usui et al., Cancer Science, 2017)。
そしてこのオルガノイドが生体内のがん微小環境を高いレベルで再現できること、免疫不全マウスの体内で腫瘍を再形成すること、さらに抗がん剤および放射線に対する感受性試験への応用が可能であることも明らかにしました(下図)。

また、ヒト、がんモデルマウス、犬由来の様々な組織(肺、大腸、前立腺、膀胱、海馬)からオルガノイドを作製し、病態解析を行うことで新たながんのメカニズム解明診断マーカーの開発を目指しています。

オルガノイド培養法の図
イヌ前立腺がんオルガノイド写真

猫乳がんの抗がん剤感受性検査の研究

当研究室では猫の乳がん組織由来のオルガノイドを作製しており、乳がんのオーダーメイド抗がん剤感受性検査の確立を目指しています。
この猫乳がんオルガノイドプロジェクトは、獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)およびキャットリボン運動との連携によって進められております。

猫の乳腺腫瘍は犬と異なりほとんどの場合悪性であり、リンパ節の転移率や再発率も高いため外科手術のみでの根治が困難とされています。
手術後の化学療法として、ドキソルビシンやカルボプラチンが主に用いられますが、生存率の延長や再発予防に有効であるという明確なエビデンスは得られていません。
また、多くの症例は民間動物病院で治療が実施されているため大学病院への来院件数は少なく、治療法の改善につながる研究がほとんど進んでいません

そこで当研究室では、罹患猫のがん細胞からオルガノイドを作製し抗がん剤処理を行うことで、各種抗がん剤に対する感受性を検査する技法の確立を目指しています。
この「オーダーメイド抗がん剤感受性検査」が確立すれば術後化学療法の最適な選択が可能になるとともに、ドキソルビシンやカルボプラチンに代わる最適なコンビネーション療法や、有効な分子標的薬の探索につながることが期待されます。

organoid_cat_fig1

当研究室は猫乳がんのオーダーメイド抗がん剤感受性検査確立のために、「猫乳がんオルガノイドプロジェクト」を立ち上げました。
当プロジェクトは獣医がん臨床研究グループ(JVCOG)およびキャットリボン運動との連携によって進められております。
プロジェクトの詳細に関してはWorksをご覧ください。

犬の前立腺がん・膀胱がんの抗がん剤感受性検査の研究

当研究室は泌尿器がん罹患犬の尿に含まれる微量ながん幹細胞から、培養ディッシュ上でがん組織を再現する新たな実験モデルを確立しました。
この研究では尿サンプルから培養した泌尿器がんオルガノイドの臨床応用を目指して、泌尿器がん罹患犬の抗がん剤感受性検査を実施しています。

イヌの泌尿器がん(前立腺がんおよび膀胱がん)は悪性度が非常に高く、発症率が増加し続けています。
治療には外科手術や非ステロイド性の抗炎症剤、化学療法が用いられていますが、残念ながら多くの罹患犬は早期に死亡ししまうのが現状です(下図)。
そのため泌尿器がんに対する新規治療法の確立や診断マーカーの探索が課題となっています。

organoid_dog_fig

当研究室では、泌尿器がん罹患犬の尿に含まれる微量ながん幹細胞から生体内のがん組織を培養ディッシュ上で再現する新たな実験モデルを確立しました(Usui et al., Cancer Science, 2017, Elbadawy & Usui et al., Cancer Science, 2019, プレスリリース)。
さらに研究の結果、尿サンプル由来泌尿器がんオルガノイドへの抗がん剤(ビンブラスチン、シスプラチンなど)の単剤あるいは併用処置による感受性が個体間で異なることが明らかとなりました。
その結果、各個体の抗がん剤に対する感受性を非侵襲的に把握し、より効果的な治療薬を選択できることが示唆されました。

しかしながら、現時点では実際の臨床における検査の有用性は明らかになっておりません。
そこで我々は尿サンプル由来泌尿器がんオルガノイドの臨床応用を目指し、前立腺がん・膀胱がん罹患犬の抗がん剤感受性検査を実施しております。
感受性検査の内容に関してはWorksをご参照下さい。

薬物動態に関する研究

この研究では薬物を投与した動物から採血を行い血漿中薬物濃度を測定した後に、動物ごとの適切な投与計画の確立を目指しています。

当研究室では薬物を投与した様々な動物から採血を行い、高速液体クロマトグラフィーを用いて血漿中薬物濃度を測定した後に、コンパートメント解析によって数式に基づいた動物ごとの適切な投与計画の確立を目指しています。

薬物動態の解析図
近年、抗菌剤の多用によってさまざまな薬剤耐性菌の出現が問題となっており、多くの動物種での薬物動態に関する情報が求められています。
私達の研究成果は、これらの課題を解決する一助になる可能性があります。

がん超音波療法に関する研究

この研究は、がんにおいて低侵襲かつ低コストな治療法として超音波療法の獣医療への応用を目指す研究です。

超音波治療はがんにおいて低侵襲かつ低コストな治療法として近年注目されています。
この研究テーマでは超音波療法の獣医療への応用を目指しています(下図)。

超音波治療の概要図
また、深部領域でも使用可能な新規超音波療法についてもテーマの一つです。